教員紹介


注目の産学連携プロジェクト

アルミニウムの多機能複合材料開発

大学院理工学研究部
ナノ新機能材料学域 教授 池野 進

 富山県の一大産業であるアルミニウム産業。そもそも本学工学部の金属工学科は、企業とともにアルミの研究に取り組み、産業として地元に根づかせ発展させるために開設された、いわば産学連携の元祖的な学科だ。その歩みは今に受け継がれ、池野研究室では多様な材料研究が展開されている。
かねてより池野教授はアルミとセラミックスを複合して世界最高強度の材料の開発を進めていたが、さらに異なる機能を持たせようと、松田准教授とともに” 光触媒アルミ材“をつくり出した。「通常は酸化チタンを表面加工しますが、私たちは酸化チタン粒子をアルミに均一に混ぜ込んだ。これなら表面が傷ついても光触媒機能は保たれ続けます」。アルミはセラミックスと一体になり強度を増し、一方もろいセラミックスはアルミのおかげで粘りを持ち、さらに酸化チタンがプラスされて光触媒機能を発揮する…単なる” 複合“にはとどまらないこの材料を、池野教授は” 多機能複合材料“と呼ぶ。
次に着手したのはアルミと超伝導の組み合わせ。” 超伝導アルミ“を線材にできれば、医療機器向けなど大きな市場が広がっている。「ところがこれが難しくて…」と振り返って苦笑い。苦心の末にMgB2(2ホウ化マグネシウム)粒子を用いることで、超伝導性のあるアルミを直径1センチほどの棒状にまでできた。「もう限界か…というところで起きるちょっとした変化がブレークスルーになる。これは夢じゃない、できる!と思えた瞬間から、開発はめざましく加速するもの」と実感をこめていう。現在、線材は直径1ミリまでたどり着いており、さらにミクロン単位の直径になれば、核融合発電炉の超伝導コイルとしての利用などが可能になる。超伝導アルミを髪の毛のような細く強くしなやかな線材へ、さらなる夢へともに進む企業の登場が待たれている。

超伝導アルミ線材の進捗
超伝導アルミ線材の進捗 ※3mm径線材への押出しに成功

プロジェクトこぼれ話

一本筋の通った研究室でありたい

「産学連携は、時流にとらわれ過ぎないことも重要だと考えています。まずは世界に冠たる研究と研究者ありき。私の研究室の根幹は“材料”の本質を極めることにあり、社会にインパクトを与える開発にも取り組みますが、材料の組織的研究という本筋を一本通したい。いわば大学らしい基本的な研究をたゆまず続けることが、結局は産業の未来にも大きなメリットをもたらすのではないでしょう」

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マイクロアレイチップを用いた細胞スクリーニングシステムの開発

大学院理工学研究部
生命・情報・システム学域 教授 鈴木 正康

 文部科学省知的クラスター創成事業として推進されてた「とやま医薬バイオクラスター(第1期)」。抗体医薬品開発や免疫機能診断などをめざす産学官共同の大型プロジェクトの始動当初から、鈴木教授はマイクロアレイチップシステムの開発と応用技術研究に携わってきた。なかでも抗体医薬品開発にはマイクロアレイチップを用いた特異的なリンパ球の検出・回収技術が重要で、平成16年度から2年間は経済産業省地域新生コンソーシアム事業としても単一細胞スクリーニングシステムの開発と実用化に取り組むことになった。
 血液中のリンパ球がちょうど1個入る直径10ミクロンのウェル(穴)が数十万個並んだマイクロアレイチップチップから細胞を1個とってくる…「そんなことできるのかと、大学も企業も半信半疑でした」と振り返る。通常は顕微鏡をのぞきながらガラスの細い管で採取する。非常に難しい手作業で時間もかかるが、機械的に効率化しようとすると高速移動の振動でガラス管が振れたり、チップとの衝突で破損してしまう。そこで金属でノズルを作ろうとしたが、ミクロン単位の細さでは金属箔のような薄さになり弱いものになってしまうことがわかった。試行錯誤を経て巡り会ったセラミックを用いることで、ようやく細さと強さの両条件を満たすノズルができた。
 ミクロンレベルでの正確なノズル移動には、連携するスギノマシンの高度な位置決め機構技術を駆使。「この高精度でウェル内の細胞を上方向から回収するシステムは世界初だと思います。今後は用途の開拓も大きなテーマ」ととらえている。実用化されたシステムをだれもが・どこでも使えるよう、また細胞の回収に限らず活用できるよう、顕微鏡に取り付けられる小型タイプも開発した。その展示会等での反応は上々で色々なところで関心を持たれている。そこからまた、さらなる試行錯誤が始まるのかもしれない。

●マイクロアレイチップを用いる
抗原特異的Bリンパ球の検出

マイクロアレイチップを用いる

プロジェクトこぼれ話

あきらめるわけにはいかない

「10ミクロンという何も見えない世界での研究は本当にストレスが大きかった。通常ならあきらめかねない困難なテーマでした(苦笑)。しかし「とやま医薬バイオクラスター」の事業推進のため不可欠な技術である以上、あきらめることは許されません。コンソーシアム事業期間の最後の3か月余りは、大学も企業も研究者がそれぞれのこだわりと熱意でがんばりぬきました。お互いにいろいろな面で多くのことを学べたと思います」

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GPS携帯電話での多言語観光案内システムの開発

大学院理工学研究部
生命・情報・システム学域 教授 唐 政

 ますます国際化が進む日本。とはいえ私たちが暮らすまちは、本当に世界に開かれているだろうか?現在、外国から日本を訪れる旅行者は約500万人。ずいぶん多いように思えるが、その数は国際ランキング第35位。日本には、外国語で表示された観光案内や地図、看板、切符などはまだまだ少なく、外国人観光客は一人歩きもままならない。日本は国際観光では後進国なのだ。
  そこで外国人旅行者のための快適で安心な観光インフラを整えようと開発が進められてきたのが、GPS携帯電話を使った多言語での観光案内システム。あらかじめダウンロードしておけば、検索開始のボタンひとつで携帯電話に現地の観光情報が得られる。まずは日本語、英語、中国語、韓国語などから希望する言語を選択し、見どころやホテル、レストラン、交通など知りたい情報を、文字・画像・音声・映像などで入手する。携帯画面の地図に自分の位置を表示させたり、目的地へ道案内させることも可能だ。
  記憶容量に限りがある携帯電話に、複数の外国語フォントを搭載できるかどうかのカギを握るのは情報圧縮技術。唐教授は膨大な文字情報の圧縮技術を独自に開発してシステムを実用化へと前進させた。実は唐教授、人間の脳に関する世界トップレベルの研究者。「脳は非常に優れた情報圧縮能力を持っています。その圧縮方法を今回のシステム開発に応用しました」という。現在、同時通訳機能付き携帯電話の開発も進行中だ。相手が話す外国語が、日本語に翻訳されて聞こえる……夢のような携帯電話の登場は近い。「携帯電話はまだまだ進化します」と自信と確信をもって語る唐教授。想像を超えてコミュニケーションを変える新しい機能を備えた携帯電話が、その研究室から続々と生まれようとしている。



●GPS携帯電話で観光案内などの情報を簡単に取得できるシステムの仕組み

プロジェクトこぼれ話

こんな展開は考えていなかった

「たとえば人の脳はどのように文字を認識しているか、人の顔をどのように判別しているかなど……私が10年以上取り組んできた脳の理論的な研究は、なかなか実用的に生かしにくい研究です。しかし今回の情報圧縮技術開発では非常にうまく生かせました。こんなふうに研究の蓄積を社会に還元できるとは、自分にとって予想外の展開でしたが、研究が形ある成果になるのはうれしく、そしておもしろいですね」

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超軽量・薄型・フレキシブル有機電子デバイス技術

大学院理工学研究部
ナノ・新機能材料学域 教授 岡田 裕之

 発光する有機デバイスの研究開発が本格化したのは1980年代後半のこと。有機超薄膜に電圧をかけ発光させる技術は、その大きな可能性が注目され精力的に研究が進められてきた。日本は90年代にいち早く実用化を成し遂げ、すでに大型ディスプレイの量産化なども始まっている。
  現在、国内はもちろんアメリカやヨーロッパなど世界各国で大学や企業が研究開発を進めており「今後は、いろいろな面で独自性のある技術を打ち出すことが重要です」と岡田准教授はいう。着目したのは有機ELの製作方法だ。従来のように高価な装置が不要で、微細なパターンも容易に形成できるインクジェットプリント法をブラザー工業と共同開発した。透明な電極付きガラス基盤に絶縁膜を形成し、インクジェットの手法で有機発光材料を吐出。発光材の溶媒が絶縁膜を溶かし、乾燥とともに発光部分が形成される。
  「インクジェット法を使った製品群や、さまざまなデバイスを組み合わせると、これまでのものとは一線を画す新鮮でおもしろいものがつくれます」。有機デバイスは発光だけでなく、光のセンシングや発電機能を持たせられる。いろいろな基本的機能を複合化・集積化して、携帯電話などモバイル端末のディスプレイの機能を大きく進化させることも可能だ。またフレキシブルであるメリットを生かして発光するテープやポスターの開発を進めている。たとえば発光するテープをプライスタグにして注目度を高めれば販売促進につながる。より大きなサイズの発光するポスターを製作するためのプリンターの大型化にも着手した。
  今や世界中のライバルが研究にしのぎを削る有機エレクトロニクス技術。「技術の独自性を確立して、世界での競争力を高めたい」と、インクジェット法をはじめすでに20件以上の周辺技術の特許化を申請中だ。

●IJP法による自己整合
有機ELデバイスの作製工程
マイクロアレイチップを用いる

プロジェクトこぼれ話

技術の橋渡しを続けていく

「システムを開発して実際に製品化するまでには、さらに5年ほど必要だといわれます。私たちとしては開発した技術を企業に渡して製品化されるまでに、また次なる技術開発を着実に進めたい。新たな技術をブランクなく次々と提供し続けることで、企業や産業の活性化を支える働きができると思います。いわば技術の橋渡し役として、いろいろな面で先んじた発想や技術を打ち出し続けたいですね」

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